涅槃図の絵解き④
耆婆(ぎば)大臣
耆婆大臣はお釈迦様の主治医です。画面中央より左下、阿難尊者の隣に侍医として俗服で描かれています。
耆婆大臣は、マガダ国のビンビサーラ王の子ですが、遊女との間に生まれた子であったため、正室の子である二歳年下の異母弟・阿闍世(アジャータシャトル)が王位に就き、自らは医師の道を貫きました。のちに仏法に帰依することを阿闍世王に薦めたのは耆婆大臣です。
歴史に残る名医であり、医師の祖とも言われ、また長寿の神として崇められています。
また、このような話も伝わっています。
ある時、阿難尊者が背の腫れ物に苦しんでいるとき、阿難の聞法の熱心さを知っていた耆婆大臣は、お釈迦様の説法中に腫れ物を切開し膿を出し治療しました。しかし、あまりの手際の良さに、阿難尊者は全く気付かなかったといいます。
執金剛神(しゅうこんごうしん)
密迹金剛神(みっしゃくこんごうしん)
執金剛神、密迹金剛神は仏法の守護者です。画面中央よりやや下、左右に描かれています。
もともと仏法を守護する一体の神の分身で、寺院の山門などに安置される仁王様のことです。しばしば、執金剛神は金剛力士、密迹金剛は密迹力士とも呼ばれ、日本ではそれぞれ阿形(あぎょう)と吽形(うんぎょう)で造像されます。
金剛杵をもって仏に近侍し、非法の者があれば金剛杵で破砕し仏を護衛します。
善与龍王(ぜんよりゅうおう)
善与龍王は八大竜王の一尊で、仏教やヒンズー教の守護神です。画面中央より左側に描かれています。
両手に供物を捧げ、衣の裾から龍の尾が出ています。「人面蛇尾」の図が多いようです。「好名善与」という仏語があり「よい評判」と訳されています。「善女龍王」とするものもあります。
空海上人が、雨乞いをした時、出現したとの話も伝わっています。
<参考文献>
WEB版新纂浄土宗大辞典
WEB版 絵解き涅槃図 - 臨黄ネット
『よくわかる絵解き涅槃図』 竹林史博著 青山社
心行寺の涅槃図は縦270センチ×横160センチの絹地に肉筆で描かれた巨大な涅槃図です。軸心に延宝七年二月十二日(1679)十一世弁誉保残和尚代に、「芝・田町・札乃辻・表具師庄兵衛」と記録があります。
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